「ぐ……む……ここは?」
気が付いた御剣は、ゆっくりと目を開いた。大きなベッドの上、暗めの照明、まわりは豪華な装飾がされている。
「いったい何処なんだ、ここは」
身体を起こし、周囲を見渡す。一見豪華に見えた装飾はひどく粗い作りで、すぐに偽物だと分かった。この部屋には気品というものが全く感じられない。
「気が付いたッスか!」
真隣から大声で話し掛けられ、御剣はビクッと身を震わせた。すぐ横に糸鋸が座っている。
「耳元で大声を出すな!」
一喝され、糸鋸は身体を小さくしてしょんぼりする。
「すみませんッス……」
御剣は質問する。
「もう一度聞く。何処なんだ、ここは」
「ホテルっす」
御剣は目を細めて質問を続ける。
「なぜこんなところで寝ているのだ」
「それは――」
糸鋸は御剣に説明した。御剣が突然気を失ったこと、緊急事態だと思ってホテルに駆け込んだこと。
「そう、だったのか……」
御剣はうつむいて落ち込んでしまった。〝失態〟、その言葉が胸に突き刺さる。
「気にすることないッス」
糸鋸の優しい言葉、しかしその言葉は逆に御剣を追い詰める。
「自分の限界を考えずに私は……情けないな」
寂しげに薄く笑う御剣。糸鋸は胸が痛くなる。
「そんな日もあるッスよ」
朗らかに笑む糸鋸を、御剣は辛そうに見つめる。
「私のミスで、このような失態を……」
「ちょっと飲みすぎちゃっただけッスよぉ」
「結果、刑事に迷惑を掛けた……」
「気にしてないッス」
糸鋸はなんとかしてなだめようと試みるが、御剣はかたくななまでに自分を責め続ける。
「すべては結果だ。結果が悪ければ、それで全て終わりなのだ……」
「そんな、仕事じゃないんスから」
「しかし、だな……」
「ここは裁判所じゃないッス! 居酒屋ッス! ……あ、今はラブホの中ッスが」
(つづく)
気が付いた御剣は、ゆっくりと目を開いた。大きなベッドの上、暗めの照明、まわりは豪華な装飾がされている。
「いったい何処なんだ、ここは」
身体を起こし、周囲を見渡す。一見豪華に見えた装飾はひどく粗い作りで、すぐに偽物だと分かった。この部屋には気品というものが全く感じられない。
「気が付いたッスか!」
真隣から大声で話し掛けられ、御剣はビクッと身を震わせた。すぐ横に糸鋸が座っている。
「耳元で大声を出すな!」
一喝され、糸鋸は身体を小さくしてしょんぼりする。
「すみませんッス……」
御剣は質問する。
「もう一度聞く。何処なんだ、ここは」
「ホテルっす」
御剣は目を細めて質問を続ける。
「なぜこんなところで寝ているのだ」
「それは――」
糸鋸は御剣に説明した。御剣が突然気を失ったこと、緊急事態だと思ってホテルに駆け込んだこと。
「そう、だったのか……」
御剣はうつむいて落ち込んでしまった。〝失態〟、その言葉が胸に突き刺さる。
「気にすることないッス」
糸鋸の優しい言葉、しかしその言葉は逆に御剣を追い詰める。
「自分の限界を考えずに私は……情けないな」
寂しげに薄く笑う御剣。糸鋸は胸が痛くなる。
「そんな日もあるッスよ」
朗らかに笑む糸鋸を、御剣は辛そうに見つめる。
「私のミスで、このような失態を……」
「ちょっと飲みすぎちゃっただけッスよぉ」
「結果、刑事に迷惑を掛けた……」
「気にしてないッス」
糸鋸はなんとかしてなだめようと試みるが、御剣はかたくななまでに自分を責め続ける。
「すべては結果だ。結果が悪ければ、それで全て終わりなのだ……」
「そんな、仕事じゃないんスから」
「しかし、だな……」
「ここは裁判所じゃないッス! 居酒屋ッス! ……あ、今はラブホの中ッスが」
(つづく)